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服薬フォローアップの義務化|誰に・いつ・何を聞くか、記録にどう残すか

「フォローアップが義務化された」と聞いてはいるものの、 誰に、いつ、何をすればいいのか が曖昧なまま走っている薬局は少なくありません。 この記事では、 何が義務で何が努力義務なのか を整理したうえで、 実務としてどう回すか を具体的にまとめます。 何が義務になったのか 根拠は 薬剤師法第25条の2 と改正薬機法です。2020年9月から施行されています。 従来は「調剤したときに情報提供と指導を行う」だったものが、 調剤後も薬剤の使用状況を継続的かつ的確に把握し、必要に応じて指導する ことまで含む形になりました。 扱い 使用状況の継続的な把握と指導 義務 記録すること 義務 (記録の保存期間にも定めがあります) 医師への情報提供(フィードバック) 努力義務 ここを混同している方が多いのですが、 医師へのフィードバックは努力義務 です。ただし「努力義務だからやらなくていい」ではなく、 必要と判断したのに伝えなかった場合の責任 は別に問われます。 全員にやる必要はない いちばん誤解されやすいのがここです。 すべての患者さんに一律にフォローアップする、という制度ではありません。 求められているのは 患者ごとの特性に応じて必要性を判断すること です。全員に電話をかけようとすると業務が破綻しますし、続きません。 優先して拾うべきなのは、次のような方です。 ハイリスク薬が始まった … 抗凝固薬、糖尿病薬、免疫抑制薬、抗悪性腫瘍薬など 用量が変わった、薬が変わった … 変更直後は副作用の出やすい時期 初めて使う剤形 … 吸入、自己注射、貼付剤、坐薬 副作用の初期症状を自分で判断しにくい方 … 高齢者、認知機能の低下がある方 飲めていない可能性が見えている … 残薬が多い、来局間隔が空いている 「気になった人」を拾えているかどうか が、この制度の本質だと思っています。 いつ聞くか タイミングは薬によって変わりますが、目安はこうです。 状況 タイミング 聞くこと 新規のハイリスク薬 1週間以内 飲めているか、初期症状が出ていないか 用量変更 次の受診の前 体調の変化、自覚症状 初めての吸入・自己注射 2〜3日後 手技ができているか、困っていないか 残薬が多い 次回来局までの中間 飲み忘れの理由(味・回数・タイミ...

管理薬剤師になるには?要件と手当の相場、引き受ける前に確認する5つ

「そろそろ管理薬剤師をやってみないか」と言われたとき、多くの人が最初に思うのは 「手当はいくらで、何が増えるのか」 だと思います。 管理薬剤師は、薬剤師のキャリアで最初に来る分岐点です。ただし 薬局によって中身がまったく違う 役割でもあります。同じ肩書きでも、実質的に店舗の責任者に近い薬局もあれば、名前だけのところもあります。 この記事では、 要件 と 実際に増える仕事 、そして 引き受ける前に確認すべきこと を整理します。 要件:資格そのものは「薬剤師であること」 管理薬剤師になるために特別な資格は要りません。 薬局の管理者は薬剤師であること が薬機法上の要件です。 ただし実務上の前提として、次の3つがあります。 その薬局に常勤していること … 週に数日だけ、という形は想定されていません 原則として他の場所での薬事に関する業務を兼務しないこと … 兼務には都道府県知事の許可が必要とされています 薬局の業務全体を把握できる経験があること … 法令上の年数要件ではありませんが、実質的な前提です つまり 「資格のハードルは低いが、拘束は強い」 のが管理薬剤師です。ここを理解しないまま引き受けると、副業や他店応援の自由度が下がって驚くことになります。 ※兼務の可否や手続きは都道府県で運用が異なります。 必ず所管の薬務担当に確認してください。 実際に増える仕事 調剤そのものは変わりません。増えるのは 調剤以外 です。 領域 内容 医薬品の管理 在庫、期限、温度管理、麻薬・向精神薬の管理と記録 従業員の監督 薬剤師・事務スタッフの業務が適正に行われているかの管理 構造設備の管理 薬局の設備が基準を満たしているかの維持 記録・手順書 業務手順書の整備と、それに沿った運用の確認 行政対応 立入検査、届出、変更手続き 意見の申述 必要なときに開設者へ意見を述べる(法令上の義務) 最後の 「開設者へ意見を述べる」 は、軽く見られがちですが重要です。人員が足りない、設備が基準を満たさない、といった状況で 会社に対して意見を述べる立場 にあるのが管理薬剤師です。ここが機能していない薬局では、問題が起きたときに管理薬剤師が矢面に立つことになります。 手当の相場 手当は 月1万円〜5万円程度 に分布していることが多く、薬局の規模...

調剤過誤を起こしたときの初動|報告の順番と、再発防止を仕組みで書く方法

調剤過誤を起こしたとき、いちばん怖いのは 最初の数分で何をすればいいか分からないこと です。 頭が真っ白になり、まず誰に言えばいいのか、患者さんにどう連絡するのか、そもそも自分は責められるのか——そこで動けずに時間だけが過ぎてしまう。これは能力の問題ではなく、 手順を決めていないから 起きます。 この記事では、 過誤に気づいた瞬間からの初動 と、 再発防止をどうまとめるか を順番に整理します。 初動の順番は「患者→上長→記録」 迷ったらこの順番です。 1 健康被害の可能性を止める … 服用前なら回収、服用後なら経過確認。すべてに優先します 2 管理薬剤師・上長へ報告 … 自分で解決しようとしない。判断を組織に上げる 3 処方医へ連絡 … 服用による影響の評価は医師の判断領域です 4 患者さんへの説明 … 誰がどう伝えるかは薬局の方針に従う。単独で走らない 5 記録する … 事実を時系列で。この段階では原因分析は書かない 2番目を飛ばさないことが最大のポイントです。 「怒られたくないから自分でなんとかしよう」が、事態を最も悪化させます。報告が遅れて困るのは薬局であり、結果として自分です。 患者さんへの連絡でやってはいけないこと 連絡役を任されたときに、避けるべきものが3つあります。 言い訳から入る … 「忙しくて」「処方箋が読みにくくて」は、聞く側からは責任転嫁に聞こえます 安全性を断定する … 「大丈夫です」と言い切れるのは、医師の評価を得たあとだけです 曖昧にぼかす … 「念のためのご連絡なのですが」で始めると、あとで「隠された」と受け取られます 伝える順番はこうです。 ①何が起きたかを事実として伝える → ②いま何をお願いしたいか → ③これからどうするか。 謝罪はもちろん必要ですが、謝罪だけで情報がないのがいちばん不安にさせます。 インシデントとアクシデントを分けて考える 過誤の報告制度でよく使われる区別です。 インシデント(ヒヤリ・ハット) アクシデント 状態 患者さんに渡る前に気づいた 患者さんに渡った・服用された 健康被害 なし あり/可能性あり 対応 記録と共有が中心 初動対応と医師への連絡が必須 大事なのは、 インシデントを軽く扱わないこと です。実際に事故になった1...

疑義照会が苦手な薬剤師へ|電話前に確認する4つと、医師に伝わる話し方の型

「この処方、たぶん大丈夫だと思うけど……」 そう思いながら、結局そのまま調剤してしまったことはないでしょうか。あるいは逆に、疑義照会の電話をかけたものの、うまく伝わらずに気まずい空気になってしまったこと。 疑義照会が苦手だという薬剤師さんは、想像よりずっと多い です。 この記事では、 電話をかける前に確認しておく4つ と、 医師に伝わる話し方の型 を整理します。技術というより、順番の問題です。 そもそも疑義照会は義務です 薬剤師法第24条は、処方箋に疑わしい点があるとき、 その処方箋を交付した医師等に問い合わせて疑わしい点を確かめた後でなければ調剤してはならない と定めています。 つまり疑義照会は「気になったらやってもいい行為」ではなく、 疑わしい点がある以上やらなければならない行為 です。ここを自分の中で固めておくと、電話をかけるときの心理的な負担がかなり軽くなります。遠慮して確認しないという選択肢は、そもそも制度上ありません。 電話をかける前に確認する4つ 照会が伝わらない原因のほとんどは、話し方ではなく 準備不足 です。受話器を取る前に、この4つを手元にそろえてください。 何が疑わしいのかを一文にする … 「用量」「相互作用」「重複」「日数」「規格」「投与経路」のどれなのか。ここが曖昧なまま電話すると、話しながら考えることになります 根拠を1つ用意する … 添付文書の記載、併用禁忌の組み合わせ、前回処方との差分。「なんとなく多い気がする」では医師も判断できません 患者さんの情報を手元に置く … 体重、腎機能、他科の処方、アレルギー歴、前回までの経過。医師が真っ先に聞き返してくるのはここです 代替案を考えておく … 「この用量では」で終わらせず、「◯◯mgへの変更でよろしいでしょうか」まで。判断の材料を渡すと、話が一往復で終わります 4つ目がいちばん効きます。 医師は外来の合間に電話を受けています。問いだけを渡されるより、選択肢を添えられたほうが早く終わる、というだけの話です。 伝わる話し方の型 順番はこれで固定してしまってかまいません。 ①名乗る 「◯◯薬局の薬剤師の△△と申します。□□様の処方箋の件でお電話しました」 ②結論 「◯◯の用量について確認させてください」 ③根拠 「添付文書では腎機能に応じた...

かかりつけ薬剤師の同意書がもらえない|要件の落とし穴とそのまま使える声かけ例

「かかりつけ薬剤師になったほうがいい」と言われても、同意書をもらうところで止まっていませんか。 患者さんに切り出しにくい。断られたら気まずい。そもそも何をどう説明すればいいのか分からない—— 制度は知っているのに、最初の一歩が踏み出せない という薬剤師さんは多いはずです。 この記事では、 かかりつけ薬剤師になるための要件 を整理したうえで、 同意書をどう切り出すか を具体的な声かけの例まで落とし込みます。 まず、自分が要件を満たしているか かかりつけ薬剤師指導料を算定するには、薬剤師本人が施設基準を満たしている必要があります。細かい数字は改定で変わるため必ず最新の告示・通知でご確認いただきたいのですが、 問われる軸は毎回同じ です。 薬剤師としての実務経験年数 その薬局に継続して勤務している期間 週あたりの勤務時間 認定薬剤師の取得 医療に係る地域活動への参画 ここで多くの方が引っかかるのが 認定薬剤師 と 地域活動 です。逆に言えば、この2つを先に押さえておけば、あとは在籍期間の問題だけになります。 認定薬剤師は計画的に取るもの 研修認定薬剤師は、一定の研修単位を一定期間内に取得して申請します。 単位は一朝一夕には貯まりません。 「かかりつけをやろう」と思ってから始めると1年以上かかります。 まだ取っていない方は、 いつ申請するかを先に決めて、そこから逆算 してください。これは行動の順番の問題で、能力の問題ではありません。 地域活動は「参加した記録」が要ります 健康サポート関連の研修、学校薬剤師、地域の講座、行政や医師会との連携事業などが該当します。 参加しただけでなく、記録が残っていることが重要 です。日付・名称・内容を控えておいてください。 同意書の前に、やっておくこと ここからが本題です。 同意書は「お願いするもの」ではありません。 お願いだと思っているから切り出しにくくなります。 実際には、患者さんにとってのメリットを説明して、選んでいただくものです。だから 説明できる材料を先に用意しておく ことが、いちばんの準備になります。 患者さんに伝わるメリットは3つだけ いつでも同じ薬剤師に相談できる … 毎回説明し直さなくていい 他の病院で出た薬も含めてまとめて見てもらえる … 飲み合わせを一括で確認できる ...

薬剤師はどこで働く?調剤薬局・ドラッグストア・病院・企業・行政の違いと選び方

薬剤師の資格は同じでも、 働く場所によって仕事の中身はまるで違います。 調剤薬局・ドラッグストア・病院・製薬企業・行政。同じ「薬剤師」という肩書きでも、1日の過ごし方も、身につく力も、収入の伸び方も別物です。 そして多くの方が、 最初に入った場所の常識をそのまま「薬剤師の仕事とはこういうもの」だと思い込んでいます。 「なんとなく合わない」と感じているなら、それは職業への適性ではなく、場所が合っていないだけかもしれません。 この記事では、主な5つの職場を比較したうえで、 どう選べばいいか を整理します。 5つの職場を比べる 主な仕事 身につく力 調剤薬局 調剤、服薬指導、薬歴、在宅訪問、かかりつけ業務 幅広い処方への対応力、患者対応力 ドラッグストア OTC販売・相談、調剤併設なら調剤も、売場管理 セルフメディケーション対応、受診勧奨の判断 病院 入院調剤、注射薬調製、病棟業務、チーム医療、DI 薬物治療への深い関与、検査値を読む力 製薬企業 研究、開発、学術、MR、安全性情報など職種は多様 職種による。専門特化しやすい 行政・公務員 保健所業務、薬事監視、衛生行政 法令・制度の知識、公衆衛生の視点 それぞれの実際 調剤薬局 もっとも人数が多い働き方です。 門前の診療科によって、経験できる処方がまったく変わる のが特徴です。 大病院の門前 … 専門的な処方、抗がん剤の内服、特殊な薬剤に触れられる。処方箋の枚数は多く、忙しい クリニック門前(内科・小児科など) … 処方の幅は狭いが、患者さんとの関係が続く。生活習慣病の長期フォローが中心 面分業型 … あらゆる診療科の処方が来る。対応力は最も鍛えられる 「調剤薬局が合わなかった」という方でも、 門前が違えば印象がまったく変わる ことがあります。ここは転職を考えるときの重要な視点です。 ドラッグストア 調剤併設が増えており、 調剤とOTCの両方に関われる のが強みです。処方箋なしで来る方の相談に乗り、 受診が必要かどうかを判断する 場面が多いのが特徴です。 一方で、 売場管理やレジ、品出しといった小売業務が含まれる ことがあります。ここを「薬剤師の仕事ではない」と感じるか、「地域の健康窓口としての役割」と捉えるかで、向き不向きが分かれます。営業時間の関係で、シフトが遅い時...

薬歴の書き方|「特に問題なし」で終わらせないSOAPの型とNG例・OK例

「薬歴を書くのに時間がかかる」「毎回、同じような内容になってしまう」——調剤薬局で働く薬剤師の悩みとして、これは上位に入り続けています。 閉局後に薬歴が残っていて帰れない。書こうとしても何を書けばいいか分からず、結局「服薬状況良好。特に問題なし。」で終わってしまう。心当たりがある方は多いはずです。 この記事では、 SOAPの型に沿って迷わず書けるようになる考え方 と、 NG例・OK例の比較 、そして 指導監査で指摘されやすいポイント を整理します。 なぜ「特に問題なし」ではいけないのか 薬歴(薬剤服用歴管理記録)は、単なる業務メモではありません。次の3つの役割があります。 次に対応する薬剤師への引き継ぎ … 自分が休みの日に、別の薬剤師がその患者さんを見ます。前回何を確認し、何が宿題として残っているかが分からなければ、また同じ質問を最初からすることになります 継続的な薬学的管理の記録 … 服薬指導は1回で完結しません。前回の指導がどう効いたかを見て次を組み立てるものです 算定要件としての記録 … 服薬管理指導料をはじめとする指導料は、薬学的管理を行い記録することが前提です。記録がなければ、行ったことの証明ができません 「特に問題なし」だけの薬歴は、 この3つのどれも果たしていません。 次に読む人は何も分からず、自分の判断の根拠も残らず、算定の裏づけにもなりません。 SOAPは「4つの箱」に分けるだけ SOAPは難しく考える必要はありません。 聞いたこと・見たこと・考えたこと・これからすること の4つに仕分けるだけです。 箱 何を入れるか S (主観的情報) 患者さんが言ったこと。 症状の訴え、飲み心地、生活の状況、不安、要望。できるだけ患者さんの言葉のまま O (客観的情報) 自分が確認した事実。 処方内容の変更、検査値、残薬数、お薬手帳の記載、見た目の様子、併用薬 A (評価) SとOから薬剤師として考えたこと。 なぜそう判断したかの根拠。ここが薬歴の中心です P (計画) 実際にした指導と、次回の宿題。 疑義照会の内容、次回確認すること、医師への情報提供 迷ったときは 「これは患者さんが言ったこと? 自分が見たこと?」 と自問すれば、SとOは自然に分かれます。 NG例とOK例を比べる NG例:降圧薬の継続処方 ...