「お薬手帳はお持ちですか」
「あ、忘れちゃった」
この会話を、一日に何回しているでしょうか。
シールをお渡しして、たぶん貼られないまま終わる。
私も以前は、半分あきらめていました。
手帳は持ってくる人と持ってこない人がいる、そういうものだと。
でも、聞き方を変えただけで持参率が上がった、という話は現場でよく聞きます。
今日は、その一言のところを整理してみます。
手帳が効くのは、たいてい他の薬が絡むとき
お薬手帳の役割は、大きく3つだと思っています。
1つめ。重複と飲み合わせを見つけること。
同じ成分が別の名前で2か所から出ている。これは手帳がないと気づけません。
2つめ。副作用歴とアレルギー歴を次につなぐこと。
「前にこの薬で発疹が出た」という情報は、患者さんの記憶より手帳のほうが正確です。
3つめ。入院や災害のときに、そのまま使えること。
急に運ばれた先で、何を飲んでいるかが分かる。これがいちばん大きい場面です。
裏を返すと、1か所からしか薬が出ていない方には、ありがたみが伝わりません。
「面倒なだけの冊子」に見えているわけです。
持ってきてもらえない理由は、だいたい4つ
| 理由 | 実際に起きていること | 効く一言 |
|---|---|---|
| 忘れる | 保険証と別の場所にしまっている | 「保険証と一緒の袋に入れておくと、忘れにくいですよ」 |
| 何冊もある | 薬局ごとに作られ、意味をなしていない | 「一冊にまとめましょうか。古いほうのシールをこちらに貼り直します」 |
| 必要性が分からない | 説明を受けたことがない | 「入院されたとき、これ一冊で先生に伝わります」 |
| 持っていても出さない | 聞かれた意味が分からない | 「前回から変わったところがないか見たいので、お預かりできますか」 |
「お持ちですか」だけだと、はい・いいえで終わります。
何のために見たいのかを添えると、鞄から出てきやすくなります。
手帳から拾えるのは、処方の中身だけではありません
受け取ったあと、私が見るところは3つです。
ほかの医療機関の記載。
整形外科と内科で似た薬が出ていないか。歯科の抗菌薬が重なっていないか。
市販薬とサプリメントの書き込み。
ここが空欄でも、書いていないだけのことが多いです。「風邪薬や胃薬を買われることはありますか」と一度聞いてみます。
日付の空白。
前回から3か月空いているのに薬が余っていないなら、飲めていない可能性があります。
残薬の話は、この空白から入ると角が立ちません。
紙と電子、どちらがいいのか
マイナンバーカードの保険証利用や電子版のお薬手帳が広がって、情報の見え方は変わりました。
薬局側から調剤の履歴を確認できる場面も増えています。
ただ、紙の手帳がなくなったわけではありません。
停電した、端末が使えない、本人が操作できない。
そういうときに残るのは、やはり紙です。
私は、患者さんが使えるほうでいいと考えています。
高齢の方に無理にアプリを勧めても、続きません。
逆に、若い方には「スマホなら忘れませんよ」が刺さります。
そのまま使える声かけ例
NG例
「手帳がないとお薬の重複が分かりませんので、次回は必ずお持ちください」
——正しいのですが、責められたように聞こえます。
OK例(初回)
「ほかの病院のお薬と重ならないか確認したいので、次からこの手帳を一緒にお出しいただけますか。診察券と輪ゴムで留めておく方が多いです」
OK例(何冊もある方)
「3冊お持ちなんですね。一冊にまとめてしまいましょうか。そのほうが、入院されたときに先生がすぐ分かります」
OK例(忘れた方)
「今日はシールをお渡ししますね。次にご来局のとき、手帳と一緒にお持ちいただければこちらで貼ります」
——渡して終わりにせず、次回の約束まで作るのがコツです。
よくある質問
Q. 手帳の有無で料金が変わるのか、と聞かれます。
A. 手帳の持参や来局の間隔によって、算定する点数が変わる仕組みがあります。ただし要件も点数も改定で見直されるので、その場で数字を断定せず、最新の告示・通知にもとづいて説明するのが安全です。
Q. シールを渡すだけでもいいですか。
A. 悪いことではありませんが、貼られないまま財布の中で溶けている、というのはよくある話です。可能なら手帳をお預かりして、こちらで貼ってお返しするほうが確実です。
Q. 家族が代わりに取りに来る場合は。
A. 手帳を持ってきていただけると、確認の精度が上がります。来局のたびに毎回お願いするより、「次からこれもお願いします」と一度きちんと伝えるほうが定着します。
まとめ
お薬手帳は、持ってきてもらえて初めて意味を持ちます。
そして持参率を上げるのは、制度の説明ではなく、一言の添え方でした。
何のために見たいのかを言う。
次回の約束まで作る。
この2つだけで、ずいぶん変わります。
まずは明日の投薬で、「お持ちですか」の後ろに理由を一言足してみませんか。
PR
こうした一言を足す余裕があるかどうかは、結局その薬局の人員体制で決まります。処方箋枚数と薬剤師数の比は求人票に載らないので、先に確認してもらうのが早いです。
薬剤師の転職&派遣ならファルマスタッフ
![]()
コメント
コメントを投稿