「実は、まだ家にたくさんあって」
投薬の最後に、小さい声でそう言われたことがあります。
次の訪問で袋を見せてもらったら、同じ薬が3か月分ありました。
残薬とポリファーマシー(多すぎる薬)は、薬剤師がいちばん気づける立場にいるのに、いちばん言い出しにくい話だと思っています。
「余っています」と言うことは、暗に「処方が多い」と言うことになるからです。
私も最初は、疑義照会の電話を持つ手が重かったです。
今回は、残薬をどう見つけて、どう提案の形に変えるかをまとめます。
まず、残薬は「飲めていない理由」の入口
残っているという事実そのものより、なぜ残るかのほうが大事です。
| 残る理由 | そこで効く対応 |
|---|---|
| 飲むタイミングがバラバラ | 一包化、服薬カレンダー |
| 錠数が多くて途中でやめる | 剤形・規格の見直しを提案 |
| 飲み込みにくい | 口腔内崩壊錠、粉、貼付剤への変更を相談 |
| 効いている実感がない | 何のための薬か、もう一度説明する |
| 副作用がこわい | 不安の中身を聞き出す。自己中断の前に |
この表のどこに当てはまるかが分かると、医師への提案が具体的になります。
「残っています」だけでは、医師も動きようがありません。
残薬に気づくための聞き方
「ちゃんと飲めていますか」と聞くと、たいてい「はい」と返ってきます。
責められていると感じさせない聞き方に変えると、話が出てきます。
- 「飲み忘れることって、週に何回くらいありますか」…あることを前提にする
- 「今、家に何日分くらい残っていそうですか」…数で聞く
- 「持ってきていただければ、こちらで数えますよ」…作業として引き受ける
とくに3つ目です。「怒られる場所」ではなく「片づけてもらえる場所」になると、次から袋を持ってきてくださるようになります。
ポリファーマシーは「数」ではなく「害」で見る
何剤以上、という線を気にしがちですが、大事なのはそこではないと思っています。
問題は、薬が増えたことで不利益が出ているかどうかです。
- ふらつき、転倒が増えていないか
- 日中の眠気、ぼんやりが出ていないか
- 便秘、食欲低下が続いていないか
- 症状に対して薬が足され、その副作用にまた薬が足されていないか
最後の連鎖が、いちばん止めたいところです。
薬歴をさかのぼると、「この薬が増えた次の月から、この薬が始まっている」という並びが見えることがあります。ここは薬剤師にしか見えません。
医師に伝わる提案の形
「減らしませんか」ではなく、事実 → 影響 → 具体案の順に置くと通りやすくなります。
- 事実…「◯◯錠が約60日分残っています。ご本人は夕食後の分を飲み忘れやすいとのことです」
- 影響…「実際の服用は1日1回に近い状態です」
- 具体案…「1日1回の製剤への変更、または朝への集約をご検討いただけますか」
ポイントは、減薬そのものを目的にしないことです。
飲めていない現実に処方を合わせる、という言い方にすると、医師も受け取りやすくなります。
一包化は万能ではない
一包化にすると、たしかに飲み忘れは減ります。
ただ、次の点は先に確認しておいたほうがいいです。
- 吸湿・光に弱い薬が入っていないか
- 用量調整が入る薬がないか…あとで変わると、全部やり直しになります
- ご本人が開けられるか…手指の力が落ちている方には、かえって難しいことがあります
- 途中でやめる薬があるか…抗菌薬などは分けたほうが安全です
「一包化しましょう」と決める前に、袋を開ける動作まで見せてもらうと失敗しません。
次の来局までにできること
その場で全部を解決しようとしなくていいと思っています。
次につながる一手を1つ置いておく。たとえば、
- 「次回、残っている薬を全部持ってきてください」と言う
- 薬歴に「残薬の可能性あり。次回確認」と一行残す
- ご家族が来られる日を聞いておく
この一行があるだけで、次に投薬する薬剤師が続きから始められます。薬歴は、そのための道具です。
今日のまとめ
- 残薬は結果。なぜ残るかを5つの型で見る
- 聞き方は「週に何回くらい」「何日分くらい」。あることを前提に
- ポリファーマシーは数ではなく害が出ているかで見る
- 医師には事実→影響→具体案。減薬を目的にしない
- 一包化は吸湿・用量調整・開けられるかを先に確認
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残薬の整理や医師への提案は、時間が取れる職場かどうかで、できる量がまったく変わります。処方箋枚数と薬剤師数の比、在宅への取り組み方。ここは入ってみないと分からない部分です。
求人票の文字だけでは見えないので、間に人が入る形で実際の一日の流れを確認してもらうのも一つの手かもしれません。
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まずは次の投薬で、「飲み忘れることって、週に何回くらいありますか」と聞いてみませんか。
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